むかで屋日常番外編 湊鼠のストールを染めました(生葉染め編)
若干お待たせしてしまいましたが、前記事の続きです。
白いストールを湊鼠に染めることに挑戦した私。
しかし、鉄媒染液の濃度を間違えてしまい、ストールは真っ黒に!
茎染めが終わった後のストールの色は、こちらでした。
よーく眺めると少し紫色がかった黒なんですが、ちょっと見には真っ黒としか言いようがないですね。
前回の記事でもちょっと言いましたが、「ゴス」系の方が首に巻いていそうな雰囲気。
齢36の私が身につけるには、いささか難易度が高い色合いです。
これを、どこまで湊鼠に近づけられるか……生葉染めは時間との勝負です、思案している時間はあまりないので、ストールが乾き次第、すぐに染めにかかりました。
生葉染めの工程は、上記の記事とほとんど同じです。
この記事の時は、色素が定着しにくい木綿のTシャツを染めたため、薬品を使って染液を還元しました。
今回は、色素が定着しやすい絹のストールを染めますので、薬品による還元は不要。
アイをドロドロになるまですり潰して、その染液に布を漬けたらすぐ染まります。
という訳で、布の重さとほぼ同量の生葉を不織布の袋に入れまして、1リットルほどの水が入ったボールの中で、よーく揉みます。
この工程、本当に気持ちよくて大好きです。
小さい頃に、雑草をすりつぶしてままごとしたり、オシロイバナやアサガオの色水を作ったりした事を思い出します。
ただし良識のある皆さんは、手袋をつけて揉み揉みしましょう。
さもないと、
自分の手が藍色に染まります!
動物性だから(?)なのか、非常に良い発色です。
さらに、2~3日は落ちません。
それでも、素手の方が気持ち良いのでついつい手袋なしで染めちゃうんですよね。
なお、ミキサーの中に布と同量の生葉と水1リットルを入れて、1分間ほどすりつぶしても染液が出来ます。
と、言いますか、ミキサーを使うほうが一般的なやり方です。
(ミキサー持ってないんです)
こうやって出来た染液に2リットルほど水を足したのち、布を染液に浸して15分くらい染めます。
染めムラ防止のため、この時も染液の中で布を泳がせましょう。
染めが終わったら、今度は水ですすぎます。
4回くらい水をかえて、とにかくよーくすすぎましょう。
すすぎが終わった直後の色味がこちら。
やっぱり真っ黒ですけど、乾かすと色がもっと薄くなるはず……
ハンガーにかけて乾かします。
この日はきっぱりとした晴れでしたし、ストールも薄手なので15分ほどで乾燥完了でした。
乾燥が終わった状態がこちら
おお!ちゃんと青みが出てる!
なかなか素敵な色には染まりましたが、湊鼠とは言えない色ですね。
紺色とかネイビーとか、そのあたりに近いかな?
ただ、しばらく使っているうちに、どうしても色が落ち着くというか若干褪色してしまうと思うので、そうなるともう少し湊鼠に近くなるかもしれません。
一番刈りのアイで染めたTシャツと合わせてみました。
(「腹回りの貫録がすごい」とか言わないように)
しかし、自然のものを使って思い通りの色を表現するのは、本当に難しいですね。
今回は、気をつけていればしなくてすんだミスをしてしまったので、正直言って少し悔いがあります。
来年もアイは育てようと思っているので、また湊鼠に挑戦しようかな?
むかで屋日常番外編 湊鼠のストールを染めました(茎染め編)
久しぶりの更新です。
育てていた藍の「二番刈り」(「一番刈り」の時はTシャツを染めました→2015-07-20 - むかで屋日常 )がそれなりに大きくなったので、再び藍染めにチャレンジ。
前回の様に生葉染めで薄い水色に染めるのも良いけれど、せっかくだったらもう少し違った色にも染めてみたい。
そこで、「藍染めの絵本」で紹介されていた「湊鼠のストール」に挑戦することにしました。
- 作者: 山崎和樹,城芽ハヤト
- 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
- 発売日: 2008/04
- メディア: 大型本
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「湊鼠」とは、やや青みがかった鼠色のこと。
『四十八茶百鼠』と言われるほどグレーの色使いに命を懸けていた江戸っ子が好んだ、粋な色です。
(詳しくはこちら→湊鼠(みなとねずみ)とは?:日本の色・和色)
化学染料なしでこの色に染める方法は、まず藍の茎で布を染め、色味が黒っぽくなるよう鉄媒染液で媒染し、その上から藍の生葉染めで青色を加えるというものです。
今回染めるのは、こちらの正絹ストール(田中直染料店で購入→染料、染色材料の専門店 田中直染料店)です。
すうっと、空気に溶け込みそうなはかなげな風情が気に入りました。
そのストールを中性洗剤で軽く洗い、よくすすいだのち、15分ほど水につけておきます。
その間に、アイの収穫。
やはり気候が悪すぎたみたいで、今年の二番刈りはかなり寂しい量です。
そのあと、茎と葉を別々に分けます。
葉っぱは生葉染めの工程まで待機。
大き目のステンレスボールに、アイの茎と1リットルほどの水を入れて沸騰させ、沸騰したら火を弱火にして15分ほど煮出します。
あ、ステンレスボールは普通のお鍋でも大丈夫ですよ。
煮出している間は、いかにも「青菜」という感じの香りがたちます。
15分煮出したら、すこし冷まして大き目の鍋やバケツに染液(1番液)を移します。
もう一度、ボウルに1リットルの水を加え、先ほどのアイの茎を15分煮出して2番液を抽出し、こちらもバケツに移します。
バケツの染液に、水から出してよく絞った布を入れ、5分から10分ほど布を浸して染めます。
そのあいだ染液の中で布を動かし続け、染めムラを防ぎましょう。
この時点では、まだうすーく色づいているだけですが、これはこれでいい色。
バケツの中の染液はまだ使いますので、絶対に処分しないでね。
次は、媒染の工程。
今回は、染料からグレーっぽい色を引き出す「鉄媒染」を行います。
「鉄媒染」のための薬品は、染料店でも購入できますが、時間があれば自分でも簡単に出来ます。
作業学習−鉄媒染液の作り方−
要は、さびた釘をお酢などに漬けてさらに錆びさせ、その上澄みを媒染に使う訳です。
さびた釘がない場合は、新品の釘(100均で買えます)を網やフライパンなどでよく炒って、お酢につけて錆びさせます。
私が手塩にかけた鉄媒染剤です。
さて、その鉄媒染液を布の重さの30%分量り、たっぷりの水(本の記述だと5リットル)の水に溶かしこみます。
5リットル入る容器がなくて、3リットルほど入るボウルで代用。
そして、先ほど茎の染液で染めたストールを投入。
すると、
ビックリするほど真っ黒に!
たぶん、媒染液が少し多すぎたんだと思います……。
本のやり方だと、この媒染液に7~15分漬けるのですが、私はストールが真っ黒になるのが怖くて5分ほどでやめました。
みなさんは、時間と薬品の量をちゃんと守りましょう……あと、ムラが出来ないよう布は液の中で動かし続けて下さい。
媒染が終わった布を、水でよーくすすぎます。
すすいだ後の色がこちら
なんだか、喪服っぽいようなゴシックなような……
次は、バケツに入っている染液をボウルに移して火にかけます。
液の温度が70度くらいになったら布を投入し、常に布を動かしながら5~10分間浸し染めします。
時間通り浸し染めしたら、水を4回かえてよーく水洗します。
洗い終わった時の布はこんな感じ。
写真だとわかりづらいけれど、少し青みがさしてます。
布を乾かしている途中の写真。
いい感じの鼠色です。
と、いったところで茎染めの工程は終了。
この上から生葉染めをほどこすわけですが、長くなりすぎてしまったので、エントリーを別にします。
はたして、ストールはちゃんと湊鼠に染まるのか!?
括目してお待ちください。
道具の風格
職人氏がお師匠さんから借りてきた刷毛が、あまりに素敵だったので、撮影。
使い込んだ風格がたまりません。
トンボ(?)の銘も粋。
以前の記事(2014-03-19)でもご説明した通り、
型紙の縁から繋がっていない部分が脱落しないよう、型紙にいったんハトロン紙と呼ばれる薄い紙を貼って保護するのですが、その時糊を塗るために使われるのが、この刷毛です。
余談ですが、ハトロン紙自体の風合いも好きです。
石焼き芋を買ったときに、入れてくれる袋を思い出します。
少し懐かしい。
型彫りの工程の中では少し地味な部分(漆で正式の補強をしたあとは剥がされちゃいますし)ですが、そこでもこんなに素敵な道具が大事に使われています。
そして、一つの道具の背景には、その道具を作っている職人さんや、その道具を作るための道具を作っている職人さんの存在があるのです。
(型紙自体、着物の布を染める工程で使う「道具」ですしね)
型紙自体の美しさはもちろん、微力ながら道具や工程の魅力も伝えて行ければなあと、いつもぼんやり思っております。
藍染めくるみボタン、旅猫雑貨店様でもご購入いただけます(+お知らせ色々)
好評の声が、ちらほらと聞こえてくるむかで屋の「藍染めくるみボタン」ですが、雑司ヶ谷の旅猫雑貨店様でも、ご購入いただけるようになりました。
和雑貨好きの皆様にも、ぜひ手に取っていただきたい品物ですので、よろしくお願いします。
旅猫雑貨店様の場所、営業時間等は上記をご確認下さい。
8月1日から旅猫さんで開催される「しろたえの 妖怪はんこで夏まつり」も、とてもかわいいので必見です。
妖怪見物がてらに、むかで屋の商品もチェックして下さいね。
消しゴムはんこ&切り絵のワークショップもあるみたいですよ。
展示と言えば、いつもお世話になっている西早稲田ののびのび荘様(http://www.nobinobisou.com/about-1/)でも、今月末から素敵な展示会が開催されます。
「長くつ下のピッピ」がテーマの作品を集めた「のさばれ!女の子!展」です。
展示タイトルもインパクト抜群だけど、DMに描かれたピッピの表情がそれに負けないふてぶてしさで素敵!
(イラストレーター、サイトウシノさんの作品です→http://shinos.jimdo.com/)
むかで屋は参加してません(男の子なので)が、ピッピの事が好きな人、もっとのさばりたいなあと思っている女の子&男の子は、ぜひ足を運んでみて下さい。
最後に、職人氏がなかなかよい写真を撮っていたのでご紹介。
紅葉柄の型紙と、その型紙で染めたハンカチです。
染めたい布の上に型紙を重ね、型紙の上からヘラで防染糊を塗った(糊を「置く」と表現します)後に染めると、糊を置いた部分=型紙の彫りぬいた部分が白抜きになった布が染め上がります。
(言葉で説明するのが、いつも大変……)
型の上から直接染料をすり込む技法(捺染、ステンシル)もありますが、伝統的な型染めと言うと白抜きの方が一般的です。
型そのものも、染めあがったハンカチも、涼しい秋の予感を告げてくれそうで良いですね。
はやく、この模様が似合う季節になってほしいものです。
むかで屋日常番外編 藍の生葉で木綿のTシャツを染めました
このブログのまくらでは、「暑い暑い」と言ってばかりですが、本当に暑いですねえ。
さて、この異様な暑さ、植物にもかなり堪えるようです。
5月に種をまいて以来、順調にすくすく育って(アイはとても丈夫な草なので、ほとんど手をかけなくても勝手に育つのです)くれていたアイが、このところの暑さにやられてしおれ気味。
黒く枯れてしまった葉もちらほら見受けられるので、染物に使えなくなる前に、急いで染めなくっちゃ!という訳で、藍の生葉染めに挑戦しました。
こちらは、数年前に染めた絹の帯揚げ。
通常、藍の生葉で染めることが出来るのは、絹や羊毛などの動物性の繊維だけです。
(「藍」と言えば木綿を紺色に染めたものの方がポピュラーですが、あれは藍の葉を発酵させて色素を得るという、特殊な技法で染められています)
アイのもつ色素は、動物由来の繊維にあるタンパク質にはよく反応するけれど、植物性の繊維にあるセルロースなどの成分にはほとんど反応しないため、木綿を染めようとしても色素が定着しないのです。
でも、毎年毎年絹のスカーフやハンカチばかり染めるのも飽きてきてしまうし、もっと日常的に使えるものを染めたかったので、今回は少し冒険して木綿のTシャツ(綿100%のもの。私は無印良品のオーガニックコットンを使用しました)を染めることにしました。
たんぱく質をあまり含まない木綿を、たんぱく質に反応する色素で染めるにはどうすればよいか、そう、「木綿にたんぱく質をおぎなえばいい!」のです。
と、いう訳で成分無調整(調整のものは糖分などが入っているので不向き)の豆乳を同量の水で割った液体に、Tシャツを漬け込みます。
30分ほど漬け置いたら、絞って乾かします。
嫌な臭いになったりしないか心配でしたが、すこし青臭いにおいがするかなあ、といったくらいでほとんど気になりませんでした。
布が乾いたら、今度は水につけて30分ほど水分を吸収させます。
その間に、育ったアイを収穫。
茎を1から2cm残して、思い切ってバッサリ刈ります。
奥の方に3株くらい残っているのは、このまま育てて種を採るためです。
ほとんど丸坊主に刈ってますが、残した茎から新しい茎と葉が生えてきて、ひと月ほどするとまた元のように茂ります。
新しく生えた部分(二番刈り)も、もちろん染色に使えますよ。
アイの生命力恐るべし。
収穫したアイを葉と茎に分けます。
茎は、二番刈りの茎と合わせて別のものを染めるのに使いたいので、小さく切りそろえて冷凍庫に。
葉は、不織布の袋にためてこれから生葉染めに使います。
収穫した葉の重さは、58グラム、うーん、ちょっと少ないなあ。
Tシャツの重さが115グラムくらいだったので、半分もないということに……この時はちゃんと染まるのか、かなり不安でした。
絹に染める場合はなんの薬品も使わずに染められるのですが、木綿の場合は薬品の力を借りて染液を還元します。
使う薬品は、消石灰とハイドロ。
いずれも10グラムの薬品を200ミリリットルの水に溶かしておきます。
(と、言っても消石灰は水に溶けないので上澄み液を使います)
www.tanaka-nao.co.jp
ハイドロと消石灰は、田中直染料店で購入しました。
消石灰に関しては、大きな園芸店にはありそう(私が行った店では「苦土石灰」しか売っていなかったですが)ですし、お菓子や乾物の吸収剤を使うという方法もあります。
まあ、染料店で購入しても226円なんですけどね。
いよいよ、染めにかかります。
生葉染めの染液は変質しやすいので、のんびりやりすぎると染まらないということも、時間との勝負です。
不織布の袋に入れたアイの葉を、1リットルほどの水に浸しまして……
揉みます、ひたすら揉みしだきます。
一般的な解説書には「ミキサーを使って葉をすりつぶし……」とありますが、ミキサー持ってないんです。
でも、手で揉み揉みするのも、小さい頃にした色水遊びみたいでなかなか楽しいし、気持ちいいですよ。
指の先が青く染まるけどね(よいこのみなさんは、手袋をして作業しましょう)
袋の中の葉がカスカスになるまで、ひたすら揉みましょう。
水が濃い緑色に染まって、全体にどろりとし、細かい泡が水面に浮かぶようになったら、まずは消石灰液の上澄み、続いてハイドロの水溶液を加え、静かに混ぜます。
すると、
水面に浮いた泡が青くなります。
これで染液は出来上がり、あとは染め本番です。
水から出して軽く絞ったTシャツを、染液にどぼんと漬けます。
染めムラが出ないよう、染液の中で3分ほど泳がせます。
1回目の染めが終わった直後。
染液の中では緑色だったTシャツが、空気に触れるとぱっと青くなります。
でも、まだ染むらがひどいのでもう一回染液につけて3分間。
2回目の染めが終わった直後。
だいぶ染めムラが減りましたが、まだ胸元に白い部分があるのでもう一回。
3回染めて、やっといい感じになりました。
染液の色もかなり薄くなってきたので、このあたりが限界かな?
流水で色が出なくなるまでよーくすすいで乾かせば出来上がり。
まだ湿った状態だと色が濃く見えるので、こころもち濃いめに染めた方が、期待通りに染まったりします。
日陰でよく乾かして完成。
現物はこの写真よりも、少し淡い色です。
心配していた染めムラも、ほとんど目立ちません。
道具は揃っていないは、生葉の量が足りないはで、正直ほとんど染まらないだろうとあきらめていたのですが、イメージに近い色が得られて満足です。
「自分で育てたアイで染める」と言うとなにかものすごい大事業に思えますが、
実際にやってみると、アイはほとんど手入れなしでもすくすく成長しますし、生葉染め(特に動物性の繊維)もたいした準備なしに(ミキサー持ってなくても!)出来るので、らくちん、かつ楽しいですよ。
ちなみに、アイの種は徳島県庁などで配布されていて、春先に手紙で申し込むと郵送代だけの負担で送ってもらえます。
いまは、二番刈りの藍で何を染めようかと考えて、にやにやしています。
またこちらで報告すると思いますので、よかったらお付き合いください。
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参考にした書籍
- 作者:仁科 幸子
- 発売日: 1999/04/01
- メディア: 大型本
- 作者:箕輪 直子
- 発売日: 2010/09/22
- メディア: 単行本